所属研究室では圃場にWebカメラやフィールドサーバを設置して圃場の様子を観察できる圃場モニタリングシステム(http://kansatsu.net)を開発し、平成23年度から岩手県紫波町立赤沢小学校で活用している。しかし、本システムで記録されたセンサ検知画像は年間5万枚を超えるため、教員が授業に活用できる農作業画像を検索することが困難であった。以上の背景から本研究では、センサ検知画像から教材として活用できる農作業画像の検索容易性の向上を目的とし、センサ検知画像の自動分類手法を提案した。また、提案手法に基づいたセンサ検知画像への農作業自動分類機能を開発し、センサ検知画像の授業での活用可能性について検討した。付与されたメタ情報を利用して教員が農作業画像を検索した際に、検索対象の画像が検索結果の画像に含まれていない可能性があると、年間5万枚からなる全画像の中から、検索されなかった画像を検索する必要があり、メタ情報による検索システムを使わない場合と同程度の負担がかかってしまう。そのため、教員が農作業画像を検索した際に、検索したい画像が1枚も洩れることなくすべて検索されること(再現率100%)を農作業自動分類機能の要件とした。また、農作業自動分類機能の分類精度と画像検索負担の観点で評価実験を行なった。提案手法では、代表的な農作業である「草生管理」、「病害虫防除」、「剪定」の3つの農作業の分類精度について実験を行なった。その結果、再現率はいずれも90%を超え、剪定の分類では再現率100%を達成できた。草生管理、病害虫防除では、カメラに付着した雨や、ほこりの影響により、再現率は90%超えにとどまった。分類精度の評価実験では、人手で画像を分類した結果と提案手法で判定した結果を比較した。実験の結果、分類精度の評価実験では、分類に要した時間は被験者によって大きく異なり、分類対象の農作業によっても時間が異なっていたことが確認できた。剪定では再現率が100%になった被験者が2名いたが、それ以外のすべての被験者の再現率、適合率は100%にならなかった。画像検索負担に関する評価実験では、本提案手法によって分類された画像を用いて分類精度を評価した。実験の結果、すべての被験者が再現率と適合率の調和平均を表すF値の向上が確認できた。これにより、本提案手法との組み合わせによって教材に活用できる農作業の検索容易性が向上したといえる。本研究によって、圃場で記録されたセンサ検知画像を、理科や社会などの教材学習だけでなく、キャリア学習や総合的な学習の時間での活用が期待される。